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​セイルズ産業医事務所は令和6年1月にサービス統合し、名称をさんぽテラスに変更しました。

休職制度について

 厚労省のモデル就業規則にも規定されており多くの企業で「休職制度」はあると思います。



 

「休職制度は必ず必要なのかな?」


休職制度は、従業員が何らかの事情で長期にわたり働けなくなったとき、解雇になってしまうのを猶予するための制度です。

 会社のことをよくわかっている従業員が、病気になったがために即刻解雇となるのは、企業としても従業員にとっても大きな損失となります。


 また、休職制度は、業務命令と同様に会社が「休職命令」を従業員に発するものです。ですので、従業員の方は、休職をする場合、私傷病であるとか、休職する(働くことができない)理由をちゃんと会社に説明して、それが承認されると会社から「休職命令」を受けることになります。


ポイント

 ・休職は解雇猶予のため

 ・休職理由は、従業員が用意

 ・会社が休職命令を従業員に出す

 


 しかし、産業医として企業様と関わっていると、


「先生、社員が急に診断書を持ってきて今日から休むと言ってきたよ」


あまりに急なことで困り果てている経営者からよく相談があります。


 精神疾患なども私傷病に当然に含まれます。怪我なら急に働けなくなることは理解しやすいのですが、こころの問題は、周囲からは推し量ることが困難で、あるとき急に動けなくなることもありえるのです。


 「急に人員がいなくなると困るから、なんとか今月末まで働かせて、それから休職ではだめか?」という相談もございました。


その間に病状悪化や事故があった場合に会社が責任をとるということになりますので、命にかかわる問題に発展する可能性もあるので、よほどの事情がない限りはすぐに休職させるべきです。ですが、中小企業はそんな相談をされるくらいギリギリの人員のところも多いように思います。


 この相談のケースに限らず、休職は「労働者の権利」のような側面もあるのだと思われます。


 ちょっとひねくれた話をします。


 従業員が提出した「抑うつ状態」という診断書に、「休業が必要」と記されていた場合。主治医の判断は「抑うつ状態」のため休業が必要である、ですが、会社側が、抑うつ状態を「ちょっと元気がない状態」と理解して、「抑うつ状態でも労務提供はできる、休職は認めない!」と判断した場合、その従業員が療養のために会社を休んだら、「無断欠勤」となります。

弊社の就業規則では「正当な理由なく15日以上欠勤した場合は、懲戒解雇とする」と定めています。


「こんなわがままな社員はクビだ!」という経営者は一人もいないと思いますが、実際には判断に迷うようなことがあると思います。


 主治医は、「医師法第十九条二項の法規定により,患者から診断書交付の請求があった場合には,これを記載・発行する義務がある」ので、患者さんである従業員から求めがあったら、診断書を記載しないといけないのです。ただ、当然、虚偽の内容は書いてはいけません。


 抑うつ状態という診断については、「うつ病とまではいかないが元気がない」とか「うつ病の一歩手前」とかと思われていますが、正しくはありません。「状態」とあるから病名でもありません。


 初めての診察で信頼関係もままならない状態では、主治医となった医師も「あなたはうつ病ですよ」と患者にはっきりと伝えることが困難な場合が多いです。本当は「うつ病」で、しかも重症でも、「抑うつ状態」という診断書を発行している可能性もあります。

 抑うつ状態の他によく見る「自律神経失調症」「神経衰弱」「心身症」なども、実は重症の可能性もあることを念頭において対処するべきです。実際には「休業が必要」と記されていれば、病名がなんであれ、会社はリスクを負うことになるので主治医の判断に従うようにしましょう。


ポイント

 ・休職制度は、ほぼ「労働者の権利」である

 ・診断名は実際よりも軽くみえてしまう場合もある

 ・診断書に「休業が必要」と記載があれば休職命令を出す



次に紹介するケースもよくあります。優しい経営者さんからの相談です。


「先生、遅刻や欠勤が目立つ社員がいる。気分に波があるみたいだ。このまま働かせてていいのかな?ちょっと面談してくれないか。」


 最初のセクションで「休職理由は従業員が用意」と記しましたが、体調がすぐれないのに頑張って出勤してしまう従業員もかなり多いです。こんな時は会社と産業医が協力して「ドクターストップ」をかけることも従業員を守るために大切なことです。


 無理してしまう理由としては、病気であったとしても体は動くしなんとか業務もこなせるので、他の方に迷惑をかけたくない、体調不良や病気のことを会社に知られたくない、気分に波があるだけで自分は大丈夫、普通に働けていると思っていたりします。


 一番やっかいなのが「仕事が楽しい」と思っているのに、遅刻や欠勤を繰り返している従業員です。産業医として面談しても「仕事は楽しい」「人間関係も問題ない」「仕事でミスしたことはない」と言うのです。「遅刻」や「欠勤」について、周りの同僚ほど本人は気にしていない場合です。

 なんらかのメンタル不調があるのは明らかですから、産業医としては「休職が妥当」と判断するのですが、主治医からは「就労可能」という診断書書が出る。会社としては医学的判断が分かれてしまったので、会社の実情を把握している「産業医」の判断に基づいて決定することが多いと思います。会社と従業員の間で衝突が起こってしまうのです。


 このようなケースでは、従業員の方の同意を得て、主治医に勤務状況や労働状況に関する情報提供をします。そうすると主治医は「休職が必要」と診断書を訂正することもあります。医学的意見が分かれるのはコミュニケーションの問題のことが多いです。


 50人未満の企業では産業医は選任していないことが多いので、会社が直接主治医と連携をとっている場合があり、うまくいっているようですが、医師との連携は一般の方にとっては苦労が多いと思います。


 また、このようなケースでは、産業医として従業員に「会社にとってあなたが重要だからこそ、休職制度をつかってしっかりと療養して体調を整えてから復帰のが良い」と説明はします。この説明を聞いたら「そうやって思ってくれていたんだ、しっかり休んで治します。」と納得される従業員も多いです。


ポイント

 ・働きやすい職場ほど、休職命令が難しいケースがある

 ・休職理由は会社が判断することもある

 ・主治医とのコミュニケーションが重要



次に、休職中の社員に関する相談です。


「休職中の従業員にはどのくらいの頻度で連絡をとって良いのかな?」


モデル規則には規定がないので、就業規則に定めているところは少ないと思いますが、休職期間の待遇や過ごし方、復職の規定、リハビリ勤務など規定を定めておくと、連絡をする担当者の心理的な負担が緩和されると思います。


 まず休職規程がないのであれば、社会通念上問題がない対応をする必要があります。


 このような相談をしてくる場合は、会社からの連絡が、従業員の心理的ストレスを増大させてしまうことを心配してのことだと思います。


 実際、会社からの連絡は休職中の従業員にとっては「心理的な負担」になります。でも実は会社に限ったことではなく、友人や家族からの連絡も「心理的な負担」になっていることが多いです。ですので連絡は必要最低限にしましょう。


 ①診察のたびに上長に報告させている場合もありますが、これも負担ですが、本人から連絡をする場合は少し緩和されると思います。


 ②毎週決まった曜日に連絡している企業様もみえます。だいたい繋がらないという事態になります。


 ③定期的に手紙を送っている企業様もございます。負担は少ないですが、返信は難しいことが多いように思います。また家族に休職を伝えていない場合もあるので慎重にしたほうが良いです。


 ④思いついたときに連絡をする企業様。気持ちは理解できますが、これはあまりに乱暴な気がします。でも、社長の動物的な勘なのか、従業員の方の命を救ったケースも過去にございました。


 ⑤外部機関に委託する。弊社も外部機関として保健師による休職者のフォローをしていますが、同様に繋がらないことも多いですが、会社からよりは本人の負担が小さいように思います。


ポイント

 ・就業規則の休職規程を見直す

 ・規程があると、連絡担当者の心理的負担が減る

 ・外部機関を上手に活用する



 さあいよいよ復職です。


「先生、休職者の主治医から復職許可が出たのだけど、何か気を付けることある?」


 復職は、休職制度の中でもっとも重要な規定となると思います。

特に精神疾患の場合、再発・再燃がとても多く、休職制度には「通算規定」なるものが存在し、同様の理由による場合は、休職期間を通算すると定めているところもあります。せっかく復職できるまでに回復したのに、また休職になり、そのようなケースは2回目の休職は長くなるので、自然退職になってしまう恐れがあります。


 復職は、原則「休職前の職務に復帰とする」とされていましたが、最近の判例などをみると、職種がはっきりと決まっていない雇用契約であれば、配置換えや職務変更も考慮するように求められています。また障害者雇用促進法などでいわれる「合理的配慮」なども休職からの復職の際に応用するべきととれるような判決もあり、注意が必要です。


 弊社のクライアント企業様の多くは、休職期間が1か月を超えた場合は、復職前の産業医面談を必須とするように社内で規程しているところが多く、復職が可能か否か判断をすることとなります。休職期間満了直前は、産業医としても特に慎重な判断が求められます。


 実際には完治していないのに、患者の働く意欲があるだけで、治療の一環として「就労可能」という診断書を書いてしまう主治医も一定数います。疾病があるからといって働く権利を奪うことは医師にも簡単にはできませんので仕方がないのかもしれません。この場合は、企業側がどこまで「合理的配慮」ができるかによって判断がわかれます。


 例えば、もともとシステムエンジニアとして採用したが、メンタル不調になり休職、回復して復職するも、また休みがちになったり、明らかにパフォーマンスが低い場合に、事務職に配置換えします。それでも改善がないので、補佐的業務にします。まだ改善がないので、今度はその従業員をフォローするスタッフを付けます。それでも改善がない場合に、フォローしていたスタッフも疲弊し、その企業での合理的配慮はもうできないということになります。

 フォローのスタッフを付けた時点でその企業様は「無理」をしているので、そこまでは必要ありません。よほどの大企業でもなければ、フォローをつけるところまでは「合理的」であるとは言えません。(合理的配慮については、私は法律の専門家ではありませんので、社労士や弁護士に相談してください)


 産業医としては、会社が無理のない合理的配慮をして就業可能かの判断になることが多いです。この場合も主治医としっかりと連携することが重要です。


ポイント

 ・復職は従業員も企業も慎重にすすめる。

 ・復職時は配置換え、合理的配慮の範囲を検討する

 ・無理な「合理的配慮」は他のスタッフを疲弊させる

 ・合理的配慮に限界を感じたら、法律家にも相談をする



リハビリ勤務についての相談も時々あります。


「先生、リハビリ勤務が必要か面談してもらえるかな。」


復職前に、制度として「リハビリ勤務」を設けている企業様もみえます。

当然主治医の就労可能の診断書が出ている状態ですので、産業医面談では、スムースな復職にむけてのリハビリ勤務の具体的な内容などの設定を行います。リハビリ勤務を行うことで、再燃リスクなどを減らすことが可能です。


①模擬出勤:まずは生活リズム、食事、睡眠、排泄が問題ない状態であれば、図書館などで勤務時間を過ごす。リワークプログラムを提供しているデイケアなどを利用するケースもあります。


②出勤訓練:まずは、玄関を出るところから始め、実際の通勤経路を少しずつ距離を伸ばしていきます。通勤経路で会社が見えるところで症状が誘発されてしまうとそこで中断します。主治医の協力が得られれば、そこからもさらに訓練を進めることはありますが、やっぱり復職は難しいという判断になることが多いと思います。


③試し出社:無事出勤訓練を乗り越えたら、会社の中で短縮した時間で復職後の部署での労働を行います。会社によっては自席で書類整理など負担の少ない業務をさせているところもあります。


ポイント

 ・再燃を予防するためにもリハビリ勤務は重要

 ・出勤訓練は必須

 ・復職後も段階的に負荷を増やしていく



さいごに


 休職制度について、実際の経験をもとに少々アレンジしてまとめてみました。実際にはもっと多くのケースがあります。従業員個々によって対応は変えないといけないのですが、柱となる「休職規定」は作っておいたほうが、会社にとっても従業員にとっても安心です。

 厚労省などのモデル規程はありますが、一度時間をとって自社の実情にあった規定にカスタマイズしてみると良いと思います。一度作ってしまうと改定は難しいと考えられがちですが、法律も時代も変わっています。従業員のためであれば、1年毎に規定を見直すくらいでも良いと思います。



付録




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